バトル。
辞書で調べてみると
戦い。戦闘。
という意味が出てくる。そこには荒々しいイメージがつきものだが、「バトル」には、大きく二種類のものが存在すると感じる。
一つは、単純に勝者を決めるというもの。もう一つは、戦うことを通して、相手を知り、多くのことをお互いに学びあうもの。
荒々しいイメージは一つ目の方で、二つ目の最終ゴールは「知る」ということにあると言えるだろう。
戦いを通して相手を知り、学びあう。
この二つ目の意味を実感できたのが、先日行われた『知的書評合戦ビブリオバトル』だ。
ビブリオバトルとは?
2017年3月5日(日)豊前市八屋の賢明寺でビブリオバトルなるものが行われた。豊前では初の開催だ。
ビブリオバトルとは、全国で行われているもので、公式サイトも存在する。そちらの方を覗いてみると、
ビブリオバトルは誰でも(小学生から大人まで)開催できる本の紹介コミュニケーションゲームです.
「人を通して本を知る.本を通して人を知る」をキャッチコピーに日本全国に広がっています!
小中高校,大学,一般企業の研修・勉強会,図書館,書店,サークル,カフェ,家族の団欒などで広く活用されています!
と、ある。
このゲームは簡単に言うと、人の前で「5分間」自分の好きな本をプレゼンして、読みたい本に投票し、一番票が多かった本「チャンプ本」を決めようというものだ。
ゲームと言っても、元々は大学の中で勉強会を面白くできないかという発想から生み出されたもなのだそう。詳しくは、ビブリオバトル 歴史を参照→http://www.bibliobattle.jp/biburiobatoruno-rekishi
このビブリオバトルの特徴として、「多数の本を読みこんだ、本好きさん」でなくても参加できるということが挙げられる。
プレゼンをするバトラーにならなくても、オーディエンスとして参加することも可能だが、バトラーになったとしても、多くの本を読んでいなくてもいい。
例えば、自分の入魂の一冊や、思い入れのある本があればそれを紹介する。またその本にまつわる自分のサイドストーリーを紹介というのでもいい。
だから、主観が入って全然オーケーで、「5分間」一冊について熱く語ればそれでよし。
そもそも、相手を打ち負かすプレゼンでもないし、プレゼンの上手い下手を決めるようなものではないので、会社で使われるようなプレゼンの技術は関係ない。だから、どんな人でも安心して参加することができる。
実際、経験者に話を聞くと、ビギナーズラックというか、初参加でチャンプ本をさらっていく者も多いらしい。プレゼンに慣れているから、活躍できるというわけでもないのが、ビブリオバトルのおもしろさだろう。
それに、あくまで、自分の読みたい本に投票し、チャンプ「本」を決めるのがビブリオバトルだから、主役は本なのだ。
ちなみに、このビブリオバトル。ルール上、プロジェクターや資料などは使うことができない。
つまり、己の言葉だけで、自分の想いを相手に伝えるということだ。デジタルな時代に、ド直球のアナログな方法で本を語る。そんな、生々しいところにもこの会の魅力がある。
バトルスタート!
今回参戦するバトラーは全部で、5人。一人を除きすべて初参戦だ。
ここからは実際のバトルの様子をお送りしたい。
始めに、ビブリオバトル普及委員である、林鉄郎さんから概要とルールの説明があり、
「ビブリオバトルは人を通して本を知り、また本を通して人を知る」というお言葉をいただいた。この会のテーマをその言葉から感じることができた。
一番手は佐藤さん。今回唯一のビブリオバトル経験者だ。
紹介された本は
「へろへろ 雑誌『ヨレヨレ』と「宅老所よりあい」の人々」鹿子 裕文 著
介護がテーマになっている本のようだ。amazonの紹介を引用させていただく。
お金も権力もない福岡の老人介護施設「よりあい」の人々が、森のような場所に出会い、土地を手に入れ、必死でお金を集めながら特別養護老人ホームづくりに挑む!
「老い」という誰もが避けることのできない命題を前に、あるときはバカみたいに楽しく、そしてあるときはジーンと胸に迫るかたちで、次から次に、ジェットコースターのようにさまざまな出来事が展開していきます
これは、自分たちの居場所を、自分たちの手で作ろうとした人々の実話。
さすがに、経験者だけあって説明がうまい。個人的にはとっても読んでみたいと思った。
ちなみに、こういう感じでタイマーが表示されている。5分間なので人によっては長く感じるかもしれないが、たとえ時間が余ったとしても何かしらしゃべりつづけなくてはいけない。
2番手は私。
漫画『服を着るならこんなふうに』を紹介させていただいた。新しいファッション指南書と言えるもので、いわゆるHow to漫画だが、とてもよくできていて、漫画としても楽しめる作品だ。
オシャレに必要なものはお金?センス?そんなものは必要ありません!大切なのはコーディネイト理論を理解することだけ。それを紹介する史上初のメンズカジュアルファッションコミックが登場!全男子必読!!
あっという間に5分が終了。普段話す機会は多いが、勝手が違い、緊張した。
毎回、5分のプレゼン終了後には、2分~3分の質疑応答がある。会場にいるオーディエンスやバトラーからも質問がある。とは言っても、みんなで楽しむのが大事なので、ネガティブな突っつきはなしというルール。
3番手は井之上さん。
『魔法のコンパス 道なき道の歩き方』西野 亮廣 著
漫才師、絵本作家、イベンター、校長、村長、ついには上場企業の顧問にも就任しちゃったキングコング西野が語る「新しい仕事の広げ方」、「本当のお金の話」、「常識の覆し方」、「エンタメの仕掛け方」とは? 肩書きを自由に飛び越える異端児の型破りな実例満載! 世間からハミ出す人のためのビジネスヒント集
井之上さん曰く、西野さんがイケメンだからという理由で手に取ったという本。
熱く語っています。(西野さんへの想いを(笑))
4番手は副田さん。
『はじめての保存食便利帖』エンディング編集部
作る楽しみ、待つ楽しみ、食べる楽しみ。
ジャム、ピクルス、ドライフルーツ……。
常備菜や非常食としても役立つ保存食。本書では、世界54種類の保存食図鑑と、55種類の保存食レシピを収録。いつも冷蔵庫にある身近な保存食から世界の珍しい保存食まで、その歴史や食べ方、保存期間のほか、保存方法、調理方法、保存食作りに必要な道具、レシピなど、保存食の基本が分かる1冊です。
堂々としています。レシピ本ということで、女性オーディエンスの反応、質問が多くあった。また、このバトラーさんは豊前でも山の方に生活している方で、食材は基本「狩る!」(植物など)という言葉が印象的だった。

頭上には横断幕が掲げられている。
トリは則武さん。
『映画と本の意外な関係! 』町山 智浩 著
なぜあのシーンにあの本が! ?
本好きのための新・映画論映画のシーンに登場する本や言葉は、映画を読み解くうえで重要な鍵を握っている。本書はその作品に登場した本や台詞、歌詞などを、元ネタである文学や詩までに深く分け入って解説。目からウロコの新たな作品解釈を楽しむことができる。明らかにされるのは『インターステラ―』とボルヘス、『ウォール・ストリート』とシェイクスピア、『007 スカイフォール』とテニスンの「ユリシーズ」などの思いもよらぬ関係性。紹介する作品はエンタテインメント作品から超大国アメリカの裏側がわかるドキュメンタリー作品まで多岐にわたっている。映画と本を愛するすべての人に贈る全く新しい映画評論!
プレゼン中、本のタイトルがもうすぐ5分というところになってようやく登場という技が繰り出され、見ている方がハラハラするという場面も。
バトルを終え、いざ投票
席に戻っていたバトラーが再び前に集合。
後ろ手に本を持ち、会場にいる者全員で、一人一票ずつ挙手で投票。
その結果…
さて、チャンプ本は…
チャンプ本は、副田さんの、『はじめての保存食便利帖』に決定!
女性の参加者も多く、レシピ本ということで、多くの票が入ったよう。
おめでとうございます!!
第一部のビブリオバトルはここで終了。
プレゼンはそれぞれの個性が出ていて、楽しく聞かせてもらった。全体の雰囲気も思ったよりゆるい感じだった。オーディエンスの一人は「これなら私もできそう」との感想を述べていた。
終了後は第二部、交流会
休憩をはさみ、残っていただけた人たちと、本堂の真ん中にテーブルを出して、お茶をしながら、ざっくばらんに話をした。
テーブルの上には先ほどのビブリオバトルで、使用された本が出され、パラパラと本をめくりながら目を通してみたり、本について話したり、また、豊前のことについてそれぞれの想いが語られた。
主催の実行委員のメンバーたちは、今後もビブリオバトルを含め、「豊前サミット」として、面白いことをやっていくようだ。
話のお供は手作りのゆずケーキ。話も弾み、楽しい時を過ごすことができた。
まとめ
今回、本を通して、非常に楽しく学びあうことができた。
「人を通して本を知る。本を通して人を知る。」
ビブリオバトルとはなんぞ?と言われれば、この言葉に集約される。
バトル終了後も本を通して人を知ることができていたおかげで、話に入るのがとてもスムーズだったように思う。
コミュニケーション能力の低下も叫ばれる現代だが、ビブリオバトルを多くの方が実践していったならば、
自分の想いを伝え、また相手の想いを聞くという古来よりなされてきたコミュニケーションの基本が楽しく身につけることができるのではと期待する。
また近々、ビブリオバトルが開催される予定なので、公式ページや、Facebook等もチェックしていただきたい。


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